韓国の最高裁が、戦時中徴用工だった韓国人4人に対し、日本企業に賠償金の支払いを命じる判決を出したと報道されました。
すでにこの問題は1965年の請求権協定で解決済みなのに、韓国の最高裁はなぜこのような判決を出したのでしょうか。
詳しく調べてみました。
もくじ
徴用工問題とは?
日本は第二次大戦中、当時統治していた朝鮮半島から労働者を「徴用工」として動員し、工場や炭鉱などで働かせていました。
この元徴用工だった韓国人4人が日本企業に損害賠償を求めていたところ、韓国の最高裁判所は新日鉄住金に賠償を命じる判決を言い渡しました。
元徴用工の4人は、1997年に日本で訴訟を起こしましたが敗訴、2005年に韓国で再び訴訟を起こしたところ、韓国の一審と二審は「日本の確定判決は韓国でも認められる」と原告敗訴の判決を下しました。
しかし、最高裁は2012年「日本の判決は日本植民地時代の強制動員そのものを違法と見なしている韓国の憲法の中核的な価値と真っ向から対立する」として二審判決を破棄し、ソウル高裁に審理を差し戻し、今回の判決となりました。
徴用工問題は解決済みなのに日本が敗訴とは?
韓国の元徴用工に対する賠償問題については、1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的な解決」を行ったというのが日本政府の見解ですが、ではなぜ今回、韓国の最高裁から日本企業が賠償命令を受けたのでしょうか。
韓国の最高裁によると、請求権協定で交渉したのは、日本の不法な植民地支配に対する賠償請求ではなかったため、徴用工・個人の損害賠償請求権は、協定には含まれないと判断し、新日鉄住金に対して元徴用工4人に4,000万円の賠償を命じました。
元徴用工に対する個人賠償も1965年に解決済み?
1965年当時、日本と韓国の国交正常化を図る過程で、過酷な労働環境に置かれた徴用工を巡り、韓国から日本に賠償を求める声が出ました。
1965年の請求権協定の交渉の場で、日本は徴用被害個人に対して日本政府が直接賠償する案を取り上げたところ、韓国が「国が賠償金を受けて被害国民に分ける」と主張したため、日本政府から一括で韓国政府に渡すという方向に決まりました。
最終的に、当時の日本政府は「供与及び貸し付け」という形で計5億ドルを韓国に渡したことで「両国の国民の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」としました。
韓国政府が元徴用工達に日本からの賠償金を支払っていない?
しかし、韓国の最高裁は、繰り返しになりますが「1965年の請求権協定には、徴用工・個人の損害賠償請求権は含まれていなかった」と判断したので元徴用工4人に賠償するよう判決を出しました。
日本政府は個人補償も含めて5億ドルを韓国に支払いましたが、当時の韓国政府は補償金の大半を、工場建設やインフラ整備など経済政策につぎ込むことを優先したので、国民に対し「補償は韓国政府に請求するように」と積極的に伝えることをしませんでした。
そこで韓国の元徴用工達は、個人請求権を行使するには民事訴訟を起こすしかなく、冒頭に示した紆余曲折を経て、最高裁による賠償命令を勝ち取りました。
徴用工の個人請求を巡る日本企業のリスクとは?
日本政府としては、国に対する補償はもちろん、個人補償も含めて、1965年に解決済みとしていますが、民事の判決に国が介入出来ないことから、現状は賠償命令が出た新日鉄住金は元徴用工に対し、賠償金を支払わねばならなくなりました。
もし、判決に従わなければ企業の財産が差し押さえられることになりますが、実際に賠償の支払いがなされてしまうと、他の日本企業も訴訟リスクを抱えてしまうことになり、日韓関係も大いにこじれることは必至です。
この元徴用工による個人請求問題については今後も目が離せないところですが、気になる情報がありましたのでご紹介します。
日本政府は国会答弁で元徴用工の個人請求権を認めていた?
戦後補償訴訟における元徴用工問題と日韓関係 https://t.co/4nt2DgLWlO 「日韓請求権協定は個人の請求権そのものを国内法的な意味で消
滅させたものではない」とする外務省条約局長の答弁— Mstn of ネアンデルタール人 (@SatoshiMasutani) October 30, 2018
日本政府は過去の国会答弁で、元徴用工個人が賠償を求める「請求権」自体は残っていると説明しています。
「元徴用工個人が賠償を求めて提訴はできるが、日本国側には賠償責任はない」という考え方です。
冒頭でご紹介したように、元徴用工達が韓国の司法で敗訴し続けてきたのも、韓国の司法もこの解釈を支持していたからだと思われます。
国は民事に介入できないため、国がこうした見解を持っていることが判決に影響はされない(されてはいけない)のですが、これが実際に認められると日本企業はたちまち大きなリスクにさらされ、日本に大変不利な前例を作ってしまうことになります。
政府は国際裁判による徹底抗戦を視野に
元徴用工個人が賠償を求める「請求権」を韓国の最高裁判所が認めたため、このままでは日本企業は多額の賠償を支払い、韓国からの訴訟リスクを常に抱え続けることになるため、政府は国際裁判に持ち込むことを視野に入れています。
元徴用工による個人請求問題が、日本と韓国の国際関係をかつてないほどの緊張状態に陥らせていることは間違いありません…続報が入りましたら改めて記事にしたいと思います。
まとめ
元徴用工による個人請求権をめぐる問題についてご紹介しました。
日本企業は大きな負担とリスクを抱えることとなりましたが、続報を待ち、詳細がわかりましたら改めて記事にしたいと思います!